海と毒薬 (新潮文庫)

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倫理観
読者に投げかけられた問い。
罪の意識の不在、それを拒絶することができないという同罪
失われた心の痛覚の回復。
発売日:1960-07
ランキング:58095位

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「海と毒薬 (新潮文庫)」のレビュー・感想

【倫理観】
遠藤周作を語るならば、
そこには必ず神がいて、
倫理的なメッセージを伝える作品が多い。
本書は、本当にあった事件を元に
フィクションであるが、
ノンフィクションに小説の要素を加えたものである。
明るい、暗いなどとしか言えない若者に
是非読んでいただきたい。
何が良くて何が悪いのか判断できない若者たちへ。
信仰的要素の深い河のような作品と比べてしまえば、
文学的な要素は薄れるが、
知らないですましている身勝手な大人にならないように。
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【読者に投げかけられた問い。】
書き出しからすっと引き込まれてしまいました。
過去の消し去りたい記憶と共に生きている医師の人生そのものへの倦怠感。
一人になるたびに甦り、甦らせるために一人になってしまう、カビのように頑強にこびり付いた記憶。
戦時中、兵士は罪の意識を持つことなく人を殺し、犯しました。
戦後、その記憶を抱いたままひっそりと暮らしてゆく兵隊と、生体実験を行った医師
爆撃で死んでいった人たち。薬が足らず医療不足の中で死んでいった患者。
放っていても死んでしまうのなら、苦しむことなく...

【罪の意識の不在、それを拒絶することができないという同罪】
遠藤周作氏の本ははじめて読みました。戦時中に行われた生体解剖事件という重いテーマを書いた作品です。

社会的な罪や自らの保身を考えることで自身の行動を規制することはあっても、自分自身の良心の呵責により罪の意識を感じることができない人々が、生体解剖という犯罪を淡々と犯していく不気味さが禍々しい印象を受けます。

さらに、罪の意識はあるが犯罪を断る力を持たず、遂にはずるずると生体解剖に参加してしまい、精神的に破綻をきたしてしまう主人公、勝呂医師の心情についても書かれています。 ...

【失われた心の痛覚の回復。】
舞台は戦時中のF市の病院である。

この物語には「どうでもいい」という意味合いの表現がしばしば登場する。
あれが死んでもどうでもいいとか、日本が戦争に負けてもどうでもいいとか、
そういう気だるさを抱きつつ生きている病院関係者らが簡潔な筆致でつぶさに描かれている。

登場人物が「どうでもいい」という感覚に対しどう向き合っているのか、
そこが読みどころのひとつかと思う。いちばん分かり易いのは戸田氏であろう。
キリスト教臭さはさほどでない。神は倫理的な頸木の例...