壬生義士伝 上 文春文庫 あ 39-2
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まるで映画のスクリーンを観るようだ。
この値段が余りにも安く感じるほどの価値が込められている
生き抜く苦しみ
長編では、浅田さんの本で一番好き!
発売日:2002-09
ランキング:2626位

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「壬生義士伝 上 文春文庫 あ 39-2」のレビュー・感想


【まるで映画のスクリーンを観るようだ。】
浅田次郎氏の小説が面白いと思うのは、物語が登場人物の会話調で進む点である。そして、それは時代を飛び越えて(しかも、行ったり来たりして)、あるときは重要なシーンを振り返り、また、あるときは未来に飛んで、その核心に迫る。

主人公、吉村貫一郎は、真面目な、家族思いの侍であるが、その置かれた状況は実に悲惨である。東北地方の貧しい南部藩の足軽であり、尋常に生きていては経済的にやっていけない。そこで、自らを犠牲にして脱藩を決意、江戸へ出、更には京都へ赴いて新撰組の門をたたく。

彼...

【この値段が余りにも安く感じるほどの価値が込められている】
小説の良し悪しは最初の数ページで分かると言われることがあるが、
まさにこの壬生義士伝は、その言葉が正しいことを証明している。

はばき元から曲がり、歯がこぼれ落ちた剣を握りしめ、
吉村貫一郎が、盛岡南部藩の蔵屋敷に満身創痍でやってくるところから始まるのだが、
この場面の描写だけでも見事な上、
吉村の語りと、その吉村をあえて蔑むように厳しい態度で扱う大野の言葉にも、
読み手を引き込む南部訛りの士言葉が満たされていて、それだけでもぞくっとさせられる。

...

【生き抜く苦しみ】
盛岡南部藩を脱藩して新撰組に入った庶民の視点から見た幕末を描いている。
テーマはたった一点、生き抜くこと、だと感じた。

飢饉や戦のために、当時の想像を絶するほどの死の身近さを感じる。
とりわけ、命懸けの真剣での勝負や切腹の介錯をする時の気構え、
当時の飢饉の酷さ等々、死に直面する時の人間の気持ちの描写が生々しい。
人間は弱肉強食の世界に生きる動物で、心がある分、苦しみが大きい。

現代、人間は長寿になり、その分、生への真剣さが失われたが、ほんの少し前...

【長編では、浅田さんの本で一番好き!】
この本を読んで、浅田さんにはまり、40冊以上読んできましたが、長編ではこの本が一番好きで完成度も高いと思います。以下、2007年9月に「下巻」の方のレビューに書いたものを少し修正しました。

武士道=家族愛という破天荒な価値観を何と新撰組に持ち込んで読者を納得させてしまう作者の筆力に驚愕してしまう。インタビューの形を通して、吉村貫一郎の人物像を浮かび上がらせる一方で、インタビューを受けるさまざまな人の人物像+時代背景まで浮かびあがらせてしまう。それがあまりにリアルなので、ノンフィクションか...